京都瑞鳳堂について
「材料が銀だからと言って、そう簡単に「銀瓶」と呼べるわけではない。」
~人間国宝 関谷四郎先生(故)~
金工芸術の精神を500年前にさかのぼる
京都西陣、西陣の名は応仁の乱の際、西軍が堀川よりも西に陣を取った事から由来しており、戦で各地に離散していた織物や金工をはじめとした職人たちが戦後、京の地に戻り、西陣と呼ばれるこの場所でものづくりを再開し、天皇家御用達の製品作りに勤しみました。
また江戸時代に大火に見舞われ半分近くもの織物機失い、西陣の衰退の大きなきっかけになりました。また、その後も大火や、天保の改革による絹織物の禁止令などにより西陣は大きな打撃を受けました。そして明治時代に東京遷都によって需要を大幅に失いましたが、様々な苦難を乗り越えながらも守り抜いてきた技術や精神を胸に現在まで西陣は輝きを失わずに来ました。
京都瑞鳳堂はそんな伝統的な西陣の一角に位置しております。屋号の中にある「鳳」の字には、かつて西陣の歴史の中で先人たちが行ってきたように、伝統だけを守るのではなく、新しいものを取り入れ、この伝統的な手作りの技法を次の世代へと伝え続けていく、今も伝説として伝えぬかれている鳳凰の様に、光り輝いてほしいという意味が込められております
その昔、鍛金の技術は武士の持つ刀の柄や鞘、鍔などの細やかな装飾品を作るのに用いられてきました。現在では銀瓶や茶器をはじめとした作品は茶人や収集家らに好まれており、姿形は昔のそれとは異なりますが、伝統を守り、最高の技術を以って心を込めて一つのものを作るという精神は昔と何ら変わりがありません。
昔と変わらぬ姿勢が伝統芸術を作る
当たり前の如く時間というものは留まることなく流れ続け、美しいものはいつの時代にもあり、失われることのない不思議な存在です。京都瑞鳳堂の作品は一見シンプルにも見えますが大器の威厳があり、そして細部にも目を向けると複雑な一面もありますが、そこには美しさがあります。この伝統技術を歳月がいくら過ぎようとも変わらず表現し続けております。完璧を追求し続けるという事は、我々京都瑞鳳堂にとって基本的な事であり、いずれの作品も最高の技術を以って制作するのは当然ながら、作家自身が想いや考え方を作品に込める事で、「物」に魂を与え、「物」から「芸術作品」と成すのです。絶えず対話をし、「物」と向き合い、全ての技術、力を注ぎ込み、作品すべてに命が吹き込まれるのです。究極の美しさを追求し、細部にまで妥協を許さず、地味な作業の繰り返しではありますが、この誉れ高き伝統金工芸術の純粋さと究極の美しさを、より多くの人に伝えていきたい、私たちはそう考えております。
伝統芸術を守りぬく、そして無限に広がる芸術的価値
一見ただの銀の板に過ぎないものを、何日もかけ幾千回も打ち延べることで、作品の輪郭が出来上がっていきます。この何度も何度も叩いて成形するという伝承されてきた工程の中で、作家が作品少しずつ魂を与え、創作していく事で命を吹き込んでいきます。作家の想いや考え方が少しでも欠けてしまうと、大量生産の「物」と何一つ変わらなくなってしまいます。そして作品を所蔵する所有者の愛情無くしては、作品はその辺に置いてある「商品」にしかなりません。「作家・作品・所有者」この三者の想いが一つになる事で、作品は本来の輝きを保ち続け、その価値を表現することが出来るのです。
京都瑞鳳堂が守り抜いているのは伝統だけではなく、同時にこの様な関係性を守りき、作家が作品を通して百年にも及ぶ技術と物語を表現することで、作品を所蔵する所有者は、作品を通して歴史の深みや重み、完璧さの飽くなき探求を感じ取る事が出来るのです。
京都瑞鳳堂の理念
「材料が銀だからと言って、そう簡単に「銀瓶」と呼べるわけではない。」
人間国宝―関谷四郎先生(故)
この短い文章で芸術作品と物の違いを完璧に説明しています。
京都瑞鳳堂は日本の伝統的金工技術、金工芸術作家の注ぎ込む想い、完璧への飽くなき探求を凝集させています。
改めて金工の美たるものを定義、説明し、百年の金工芸術を伝承していきます。
多くもの時代を乗り越えた、究極の美を現代にお届けいたします。
伝統、それは百年もの間積み重ねたプライスレス
産業革命によって機械化の時代が到来し、人々は時間をかけて高価なハンドメイドの物を作るよりも、新しい技術で大量生産をすることで、ある程度の美しさのある機械製品を選ぶようになりました。しかし、時代の変遷に直面しながらも、類まれなる技術を持つ職人たちは、依然として自分たちが守りぬいてきた昔ながらの伝統的な技術に意義を感じ、そしてどれだけ困難な環境にあったとしても、様々な形を通して伝統技術を後世へと残してきました。
京都瑞鳳堂の作家たちは自身が受け継いできた、決して何物にも代えることの出来ない尊き伝統技術を今もなお守り続けているのです。
時間、伝承されてきた金工技術の精髄
京都瑞鳳堂の屋号は100年にも渡って続いております。そして我々は日本の伝統的な金工芸術を守り、先人たちの骨の折れる努力と長年培ってきた、精巧で高度な技術をこの時代に再現し、悠久の歴史の織り成す伝統作品を、精神一到し、一球入魂ならぬ一打入魂でひとつひとつ丁寧に作り上げます。先人たちは金工芸術の礎を築き、そして先人から次の時代の担い手たちに技術が受け継がれ、受け継いだ者たちの手により少しずつ技術を向上させ、今の京都瑞鳳堂の世界にふたつとない、唯一無二な作品たちが出来上がるのです。
芸術とは伝統と革新の共演である
先人たちが工夫を凝らし残してきた技術、これが単なる歴史の一つに過ぎないのであれば、博物館に埋もれているだけなのかも知れませんが、これらを生きた芸術作品として守るためには、途切れることなく受け継がれてきた技術に、作家たちの想いや考えに加え、究極の美や自分を超越するためへの飽くなき探求心が不可欠なのです。京都瑞鳳堂は100年にも及ぶ歴史の中で、究極の美への探求心や、金工芸術に新しい活力を注ぎ、伝統技術を再認識し、金工技術の精髄を世に残していくだけでなく、伝統と革新を融合させる絶え間ない努力をしてきました。
価値は人々の究極の表現である
伝統というものが技術や物であったとしても、全ては人々の為に何世代にも渡り伝承されてきました。工房に足を踏み入れると鳴り響く道具の音が、あたかも伝統技術や完璧への探求心を作品に注ぎ込んでいるかのように聞こえてきます。そして、作品の所有者たちは命を吹き込まれた作品を楽しみ、そして美しさを称え、作品への思い入れが強くなり、その想いを他者へと伝え、ひいては次の世代へと伝わり、芸術の価値はこの瞬間に光を放つのです。京都瑞鳳堂はこの精神を世に伝え、守り抜くことが我々の使命だと思っております。そして、芸術の美しさが世に触れる事で、京都瑞鳳堂の100年に渡る歴史の栄光を保つことが出来るのです。