手絞りについて
京都瑞鳳堂は、日本の伝統的な技法、鍛金や彫金の技法を用いて、銀瓶などを制作しております。
鍛金や彫金と言っても、近年は機械による加工技術の進歩により、機械生産に頼るところが増える一方で、京都瑞鳳堂は伝統を守り、失われつつある「手絞り」にこだわって制作をしております。
手絞りとは古来より続く技法で、一枚の銀板を叩いて絞り、形を作ります。当時からある刀鍛冶の技法、鍛造の技法が絞りの技法に形を変え、甲冑や装備品、茶道具などを作るようになりました。
ほとんどの金属は打ち延ばしたり、絞ったりなどの加工をすることで疲労が起き、亀裂が入るなど劣化してきます。これを防ぐために焼き鈍し(やきなまし)という金属を柔らかくするための熱処理をし、徐々に冷まし、当て金に当てて金鎚で叩き、銀板を絞っていきます。
焼き鈍しはその過程により、温度変化による材料の硬さに変化が生じないため、時間をかけて絞ることができます。また、金鎚で叩くことで硬くなった銀板を、再度焼き鈍しすることで、また柔らかくすることができます。この工程を繰り返していき、形を変えていくことで、徐々に作品となっていくのです。
近年増加している機械を用いた、へら絞りや圧縮して形を造る鋳物とは違い、時間も手間も多大にかかりますが、手仕事ならではの温かみがあるだけでなく、作品の厚みは均一で軽く、機械では作ることのできない、複雑な形を作ることができます。
ならしについて
「ならし」は鍛金の工程の中で非常に大事な作業で、当て金に当てて金槌でアウトラインを作り上げる工程を言います。叩いてならしていくため、ほんのわずかな変化にも対応することができ、機械ではできない難しい形、変形した形、あるいは自分の思う形を作ることができます。
打出しについて
かつては甲冑に始まり、花瓶や湯沸しに「打出し」という技法が使われるようになりました。
「打出し」は鎚起とも呼ばれ、鎚で薄い金属を打つことで、模様を浮き出させる技法です。金属の伸展性を利用し、薄いながらも堅牢なものを作ることができます。「打出し」の技法もまた鋳物やプレスする機械製品とは大きく違い、膨大な時間や手間がかかりますが、作品には細部にまで模様を施すことができ、また機械ではできないような細かく複雑な模様を打ち出すことができます。
先人たちが現代の様な最先端の技術がない中で作ることのできたものを、今の時代に作れないということはありません。ただ、時間や手間ひまをかけてやらなければいけないだけに、今や失われつつある伝統の技法を守り抜くことには、精神力や労力、努力が必要とされますが、それだけの価値があるということは言うまでもないことでしょう。